奥山地区の概要
浜松市北区引佐町奥山は浜名湖の北部に位置し、周辺に低山が連なる。人口約1400人。引佐町と言えば一昨年のNHKのおんな城主直虎の主舞台となったところである。
周辺は農業が中心。近くには老人ホームや奥山幼稚園と小学校があり、通学道路には搬入運搬トラック(10t)40台が往復することとなる。処理場内に立板沢川という小河川が流れ、いくつかの河川と合流しながら、最終的に浜名湖へ注いでいる。奥山地区を流れる河川の水質は、環境基準と比較するのも失礼なほど清浄で、ほとんどの項目は検出限界以下であり、人の活動の影響は極めて少ないと言える。河川水は主に稲作栽培に利用されている。
廃棄物処分場と処理業者
設置業者は、浜松市内に本社がある廃棄物処理業で地元と東海地方に広げている民間の株式会社ミダックである。埋め立て規模は「東京ドーム2杯分」といわれ埋め立て期間は33年間。埋め立てられるものは水銀などの有害重金属やトリクレンなどの有機溶剤・PCB・ダイオキシンなどの汚染物と廃石綿16品目の産廃と汚染土壌。これらの産廃や土壌は排水処理や地下水の汚染防止が必要とされる管理型処分場で処理することが法律で定められている。
多種雑多な有害廃棄物を受け入れるため水質管理は複雑になるところ、排水出口には有機物(COD)とpHの測定器しかない。。
”有機物が処理できていれば、重金属も処理できているとミダックは主張していますが、そのような学会論文ありますか?”、「当社および浸出水処理プラントメーカ-とも持ち合わせておりません」。水質の「定期検査」は1年に1回が2回になったが、たしかにそれでも定期検査ではある。多種の有害汚染物には多機能の測定器が必要になる。地下水を汚さないよう遮水シートが敷かれるが、そのシートが破れても、漏洩検知システム(網)を設置していないので、破損事象の把握や破損個所はすぐにはわからず、地下水に汚染を広げる心配がある。最低限の処理システムと維持管理による処分場を作り、処理水は河川合流により濃度が薄まり環境基準は維持できるという論理では、”環境”を語る資格はない。
処分場は、三嶽鉱山という砕石採取場の閉山と同時に引き継ぐ形で建設されている。ごく近辺には、砂防指定区域がある。採石場ではダイナマイトを使わなくても重機だけで採石が可能なほど、地盤はもろい。2018年7月の大雨では、処分場内外の斜面が崩壊し、市の里道も崩落している。
住民運動
地元住民は、噂の段階から環境対策協議会を結成した。この組織は奧山地域の自治会組織とその連合会を中心に、各種団体で構成され、環境安全協定の締結権限を委任され、交渉の窓口となっている。条例段階では事業者の説明会への参加、意見書の提出、浜松市への要望書や交渉、署名活動の提出、広報活動を行ってきた。浜松市によるあっせん打ち切り、事業者の処分場の許可申請と浜松市の許可処分に対して、住民監査請求や行政不服審査請求を行い、浜松市の設置許可取り消しを求める行政訴訟も準備中である。
2019/09/19 記